飛行機関連

JAL副操縦士・飲酒事件 続報

JAL副操縦士・飲酒事件の波紋

世の中にはある事件をきっかけに問題が大きくクローズアップされるという事が良くあります。
最近では現在裁判中のあおり運転の件、この裁判で検察が適用しようとしているのが危険運転致死罪、これ自体も1999年(平成11年)11月28日に東名高速で発生した飲酒運転のトラックが普通乗用車に衝突して起きた事故により幼い姉妹が死亡した件が発端です。

今回の英国でのJALパイロットの飲酒による逮捕、起訴はまさにそのケースに発展しました。

ご承知の通り車の飲酒運転に関しては厳しい罰則や具体的な数値が設けられており、特にプロのドライバー、とりわけバスの運転手は日に3回のアルコール検査をするところもあるくらいに厳しいものです。

飛行機の世界はどうかと言うと航空法第70条により「航空機乗組員は、酒精飲料又は麻酔剤その他の薬品の影響により航空機の正常な運航ができない恐れがある間はその航空業務を行ってはならない。」と規定されており、また通達で乗務開始前の8時間の飲酒も禁止をしています。
違反すれば懲役か罰金の刑罰がありますが、アルコール検査の義務付けはなく、具体的な数値なども設けられておらず、いわば大枠のみ法令で制定し、詳細な方策は会社任せでした。

日本航空でも昔はアルコールの検査は行っておらず、十数年前に検査が開始されましたが、それまではパイロットが飲酒操縦を行うわけがないと言う性善説の様なものがありました。

しかしアルコール検査を行ってみると年間何件か検査にひっかかるケースが出てきて、その都度検査が厳しくなったりしていましたが、検査自体が形骸化してしまった感は否めません。

このケースがきっかけで大きく事態が動き国交省が国内全25社の航空会社と対策会議を開くに至り、また定期運送事業 に限らず、使用事業の世界にもその波紋は広がりつつあります。

検査の厳格化、厳罰化だけでは飲酒問題はなくならない!

これから検査の厳格化、厳罰化が進むと思われますが、確かに今回のケースのような事は未然に防げると思います。
しかし飲酒がなくなるかと言えば車のケースでもわかるように件数としては一定数出てくるのではと思います。

それは飲酒問題がパイロット以前のもっと人間性に係るものだからです。

国際線パイロットの仕事は華やかに見えますが、実態は非常に過酷な勤務を強いられています。
まず誰もが苦労するのが時差の問題です。
今回のロンドンからの乗務も日本時間で考えれば12時間前後の徹夜のフライトになります。
クルーは乗務前にできるだけ寝ようとしますが、日本時間の昼に十分に眠れる事は稀です。
行きの疲れも残る中で帰りの徹夜フライトは非常に辛いものがあります。

また昔に比べて現地での滞在も短くなっており、十分な休養がとれなくなっている事もあります。

JALは今まで乗務前12時間以降の飲酒を禁止していましたが、それを24時間に変更、また滞在地での飲酒を禁止と言う措置を現在講じています。
更にアルコール検査の厳格化も行っています。

規則を厳格化することは当然と思いますが、根本的な解決には意識改革等の教育はもちろんの事、もっと人間的な部分、たとえば休養や睡眠の問題(人間としての生理的な部分)を会社として積極的に取り組むことが重要になるのではと思います。

過酷な判決

11月30日、英国の裁判所は、日本航空の副操縦士に対し、禁錮10カ月の実刑判決を言い渡しました。
裁判官は「非常に長距離のあのフライトで最も大事なのは、乗っている人全員の安全だ。あなたの酩酊によってその安全が、危険にさらされた」「あなたがあの飛行機を操縦していたらと思うと、あまりに恐ろしい。乗っていた人たちに壊滅的な結果をもたらす可能性もあった」と述べたと言います。

今回、副操縦士が行った行動は言語道断で同情の余地はありません。
同じパイロットとして恥ずかしいし、読者の皆様に代わってお詫び致します。

彼はまだ42歳です。
これから機長になってあと26年間飛べたはずですが、自業自得とは言えパイロットの夢が途絶えたことは同じ仲間として残念でなりません。

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