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JAL機が誘導路で脱輪…飛行機の誘導路でのスピードは・・・。

デリー発成田行きJL740便が、成田空港で着陸後、誘導路で脱輪しました。

映像を見てみるとHigh Speed Taxiway(高速離脱誘導路)での脱輪のようです。

High Speed Taxiway(高速離脱誘導路)と言うのは着陸後、速やかに滑走路を離脱することができるようにするために滑走路と直角ではなく斜めに設置された誘導路です。
通常、滑走路に対して直角の誘導路から離脱する場合、速度は10kt(18㎞)以下にしますが、このHigh Speed Taxiway(高速離脱誘導路)の場合は30kt(54㎞)から40kt(72㎞)くらいのスピードで進入することができます。

と言って今回のケースで30kt(54㎞)から40kt(72㎞)のスピードでHigh Speed Taxiway(高速離脱誘導路)に進入したという事にはなりません。
上記のスピードはあくまでも滑走路がDry(乾いている時)の目安のスピードです。

パイロットは着陸前に前夜からの雪の情報、滑走路が滑りやすい情報等、十分な情報を得ているはずですので当該パイロットはたとえHigh Speed Taxiwayを利用するにしても十分に減速して進入したと思われます。

ここで誘導路での飛行機の速度を纏めてみましょう。

滑走路の状況によって目安のスピードが違ってきます。

まず滑走路がDry(乾いた状況)の時は直進25kt(45㎞)以下、旋回時10kt(18㎞)以下、
Wet(滑走路が濡れてる場合)の時は直進15kt(29㎞)以下、旋回時7kt(13㎞)以下(すみません、この場合、概ね此のくらいだったと思いますが少しうろ覚えです)
Slippery(今回のように凍結等で滑り易い場合)の時は直進7kt(13㎞)以下、旋回時3kt(5㎞)以下です。

このスピードはあくまでも目安ですのでこれ以下であれば絶対に滑らないという事ではありません。

今回の当該パイロットも滑走路の状況と上記スピードを念頭に置いてそれなりに減速してHigh Speed Taxiwayに入ったはずです。

それでもなぜ滑ってしまったのか?
いろいろな原因があるのかもしれませんが、あくまでも例えばですが、High Speed Taxiwayに入るときに若干スピードが速かった、且つ当該誘導路には防氷剤を散布していなかったようなので非常に滑り易い状況だったと言う複合要因が重なったのかもしれません。

飛行機は一度滑り出したら質量が大きい分止まることはできません。(車でも滑ると止まらないのと一緒です。)
ですので本当に滑り易いところでは止まるくらいのスピードで絶対に滑らない様に最新の注意を払って進まなくてはなりません。

ここら辺の意識がどうだったのかは計り知れませんが、若干油断していた可能性も否定はできません。

飛行機のタイヤは車のタイヤのようにスタッドレスタイヤにはなっていません。
縦に数本の溝が入っていますが、これは雨の時にハイドロプレイニング(雨の時にタイヤと路面の間に水が入り込み、飛行機が水の上を滑るように走る現象)を防止するために水はけをよくしているだけです。

ですので凍結しているところでは一度滑り出すとブレーキやタイヤの性能で止まることは困難です。

しかしこの様な状況でもスピードをコントロールできる方法が一つあります。

それはエンジンのリバース(逆噴射)機能を使うことです。
これは着陸時にエンジンの後方をふさぎ、推力を前方にする事で飛行機の速度を減速するために使います。

今回の脱輪時の映像を見てみると右エンジンがリバースに入っていますので(エンジンの後方部分が後ろにずれています。)当該パイロットもこの操作をして何とか滑りを止めようとしていたことが伺えます。

左エンジンもかなりの推力でリバースに入っていたようで脱輪時に左のメインタイヤが埋まり、左エンジンと地上がかなり接近してエンジンの推力が泥を巻き上げている様子がわかります。
左胴体の前方は巻き上げた泥で黒くなっています。

もう少し誘導路に幅があれば止まることが可能だったかもしれませんが、間に合わなかったようです。

またこの操作の応用方法として次のような使い方もあります。
通常、滑りだしたら滑って行く方向を制御できませんが、片方のエンジンのリバースを使うことによって滑る方向を変えることができる可能性があります。

今回の場合ですと右エンジンのみをリバースに入れると機首は右に変更していきます。
機首が右に偏向したらリバースを戻し、前方への推力を確保するとうまくいけば滑る方向を変えることができるかもしれません。
(もしかすると機種の方向のみが変わり、滑る方向は変わらない可能性もありますが・・・)

ただこの操作、机上では考えることができますが、とっさに正しい操作ができるかどうかは難しいですし、このような訓練もしていません。
理論上こうだと言えるだけです。

この操作をしたら今回は脱輪しなかったかどうかは不明です。

飛行機にはフライトレコーダーと言って常時、運航状況を記録している装置があります。
近い将来、フライトレコーダーが解析され滑った時のスピードや方向等が明らかになり原因も特定されると思います。

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