飛行機関連

飛行中、コーヒーをこぼし緊急着陸!

先日、ドイツ・フランクフルト発メキシコ・カンクン行きの旅客機、エアバスA330-243が大西洋上を飛行中パイロットが通信制御パネル上にホットコーヒーをこぼし、その結果、通信機器から煙が出て焼けた臭いが立ち込めたためアイルランドの空港に緊急着陸したという報道がされました。

今回はこの件について書いてみたいと思います。

実はパネルにコーヒー等をこぼし、煙がでて緊急着陸に至らないまでも装備の故障を招いたと言うケースは私が所属していた航空会社でもありました。

それを受けてその航空会社ではある防止策を考え実行しています。

コーヒーをこぼした場所はどんな装備が・・・?

防止策を書く前に今回コーヒーをこぼした場所がどういうところか説明しますね。

今回、コーヒーをこぼした通信制御パネルが配置されている箇所は機長と副操縦士の間にあるペデスタルと言う場所です。

このペデスタルには航空機によって多少の違いはありますが大体以下の装備が配置されています。

FMC(Flight Management Computer)の3系統
Thrust Lever (推力レバー)
Fuel Control SW(燃料スイッチ)
通信関係の制御パネル3系統
ATCトランスポンダー(レーダー上に自機の位置を表示させるもの)
ウエザーレーダーの操作パネル(気象レーダーと呼ばれているものです。)
ラダートリム操作ノブ
エルロントリムのコントロールSW

どれも液体をこぼすと当然ながら故障を起こす可能性は高いです。

怖いのは今回のケースの様に電気系統がショートして火災が発生する事です。

計器や装備等から煙や火災が発生した時にはElectrical Fireと言うChecklist行いますが、これは原因となる装備、計器のサーキットブレーカーを抜き、電源を断って消火すると言うものです。
今回も操縦室に煙が充満し、マスクをつけたくらいですので多分この様なChecklistを行っているのではと思います。

(画像をクリックすると拡大します。)

パイロットはCAからどの様に飲み物を受け取っているのか?

今回のケースの機種はエアバスA330ですが、ニュースをよく読んでみるとCAからの飲み物の受け渡しの時にこぼしたようではないようです。

操縦席のテーブルからペデスタルにコーヒーカップを落としたようですが、これはエアバスの飛行機に特徴的な事でBoeingの飛行機ではほぼ今回のケースは起こりません。

エアバスとボーイングの違いについては後述しますが、まずは飲み物の受け渡しの時に取りそこなってペデスタル上にこぼすケースはエアバスとボーイング双方に発生する可能性がありますし、私が勤務していた航空会社でもこのケースですのでこちらから説明します。

CAはパイロットに飲み物を渡すときにペデスタルの上を経由して手渡そうとします。

機長であれば機長の右側から、副操縦士であれば副操縦士の左側です。
(機長席は前方に向かって左側、副操縦士席は右側です。)

機長であれば右に振り返って飲み物を貰う形になります。

ここで飲み物を受け取りそこなうとペデスタル上に紙コップが落下するという事になります。

今回は飲み物にふたをしていなかったという事ですが、今回のドイツの航空会社コンドル航空ではふたをしない事が当たり前のことだったという事ですが、これは通常であればふたをする事の方が当たり前です。

ただ飲み物にふたをしていたとしても落とすとどうでしょうか?
うまく落ちればふたは外れませんが、落としどころが悪いとふたは外れてしまうかもしれません。

これを受けて私が勤務していた航空会社では以下の様な防止策がとられました。

有効な防止策とは・・・?

先ほど「CAはパイロットに飲み物を渡すときにペデスタルの上を経由して手渡そう
とする」と書きましたが、要するに装備上にこぼさないようにするためにはペデスタルの上を経由しなければ良いわけです

飲み物をペデスタルの上を経由して手渡す方法として次の様に書きました。
「機長であれば機長の右側から、副操縦士であれば副操縦士の左側から、機長であれば右に振り返って飲み物を貰う形になります。」

これを逆にすればよいわけです

機長であれば機長の左側から、副操縦士であれば副操縦士の右側から、機長であれば左に振り返って飲み物を貰う形になればよいわけです。

要するに操縦室の中央にあるペデスタル上経由でなく操縦室の窓側から飲み物を受け取れば大事な装備上に飲み物をこぼす事はありません。

今でもこの方法で飲み物を受け取っているパイロットはいると思いますが、私が勤務している頃は残念ながら必ずしも徹底されていたとは言えませんでしたが、良くわかっているCAは最初から窓側から渡すように飲み物を渡してくれました。

ただペデスタル上経由で飲み物を渡すときでも飲み物には必ずふたをして、飲み物を抑えながらトレイごとペデスタル上に運び、取り損ないによる落下防止をしていました。

(画像をクリックすると拡大します。)

エアバスとボーイングでは事情が違う。

エアバスはボーイングの様に大きな操縦桿がパイロットの前にありません。

エアバスは操縦桿の代わりにサイドスティックと言うゲームのスティックの様な形状のものが各パイロットの窓側に装備されています。

そのためにパイロットの前にはスペースがあり、テーブルが出せるようになっています。

今回のケースはこのテーブルに置いていたコーヒーが不幸にもペデスタル側にこぼれた様です。

ボーイング機でもエアバス機でも車についているような飲み物のホルダーが各パイロットの窓側の下にあります。
ボーイング機はそこにしか置けませんのでこのケース(テーブルに置くこと)はボーイングではありません。

(画像をクリックすると拡大します。)

(画像が黄色っぽいのはサンバイザー(日除け)のせいです。B747-400のサイドウィンドウのサンバイザーは黄色にコーティングされた透明のフィルム上のものが、ちょうど電車の日除けが窓の上に巻き取られているのと同じようにB747-400では窓の横のピラーに取り付けられており横に引き出して使用します。)

今回のケース、飲み物にふたをしていれば防止出来ていたかどうかわかりませんが、運航会社のコンドル航空は「その後、すべての便で、飲み物にふたをすることを定めるなど、社内方針を変更し、乗員に対し、規定を守るよう周知した」そうですが、今更の感がありお粗末ですね。

飲み物の受け渡し方法も窓側から渡すように教えてあげたいくらいです

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