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羽田空港で何が起きたのか?JAL機と海上保安庁機の衝突事故の背景

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2024年早々、能登の地震に続き、羽田で衝突事故が発生し、大変な年明けになってしまいました。
災害が災害を呼ぶ、羽田での事故は能登の地震の2次被害とも言えます。

今回の地震、及び羽田の事故で亡くなられた方々に心よりお悔やみ申し上げます。

事故はどの様に起こったのか?

今日は事故の翌日、これまでに報道された情報から考えられる原因について元パイロットの目から推測してみます。

しかし、まだ情報は錯綜しています。
記事はこれまでの事実をもとにしたものではありますが、原因を断定したものではない事に留意をお願い致します。
正確な原因は事故調査委員会の調査にゆだねたいと思います。

航空管制の問題

この様な事故は管制(パイロットと管制塔との交信)に起因する事が多いのでこの部分から考えていきます。

当時のATC(Air Traffic Control・・・パイロットと管制塔との交信)のアーカイブを聞いてみるとJAL機のパイロットは管制塔から着陸許可を受けそれを復唱しています。

一方、管制塔から海保機への指示は「No1 Taxi to holding Point C5」です。

「No1」の意味は「No1 for Departure」、出発機としては優先順位1番ですよと言う意味で離陸許可を意味するものではありません。

「Taxi to holding Point C5」は「C5という誘導路の待機場所まで走行して下さい」と言う意味です。
海保機は滑走路への進入は許可されておらずC5の滑走路の手前にある待機場所で待機しなければなりません。

一方、今日の報道によると海保機のパイロットは「離陸許可を得ていた」と言っているようです。

以上の情報からすると何らかの原因で海保機のパイロットは離陸許可を得たと勘違いし滑走路に進入、ちょうど着陸間際で接地操作をしていたJAL機と衝突したと言う可能性があります。

滑走路に進入した事実は衝突場所から見ても明らかです。

JAL機が衝突するまで海保機に気が付かなかったのは何故?

それでは何故JAL機は滑走路に海保機が進入してきたのに衝突するまで気が付かなかったのでしょうか?
この事はJALの関係者が会見で「パイロットは衝突まで海保機を認識していなかったと思われる」と言っている事からも裏付けられます。

この事を疑問に思いませんか?

飛行機には衝突防止灯と言う赤いライトが点滅しています。さらにストロボライトと言うカメラのフラッシュの様な閃光が翼等についています。

通常であればこのようなライトで前方の飛行機を認識できるはずですが、夜に滑走路に向かっている場合は少し事情が違ってきます。

闇夜の中に飛行機がポツンと1機飛んでいる場合は上記のライトで容易に飛行機の存在を認識が出来るのですが、夜、滑走路に向かってる場合には空港のいろいろな航空灯火に紛れてしまってせっかくの飛行機の衝突防止用のライトに気が付かないと言う事が起こりえます。

衝突場所は旅客機が通常の着陸操作を行えば接地するであろう場所で起こっています。

その場所には滑走路灯、滑走路中心線灯、接地帯灯が煌々と点灯しています。
おまけに滑走路の周りもいろいろな航空灯火でいっぱいです。

そこに飛行機がいると思って見ればわかるかなと言った状態である事は想像できます。
飛行機が小さい場合はなおさらです。

飛行機の大きさに起因するもの

もう一つ、いくら何でもすぐ目の前にいたらわかるのではと言った疑問もあると思います。
これは飛行機の大きさに原因があります。

海保機の機種はボンバルディアのDHC-8-315 Dash 8、大きさは長さ:25.7 m、高さ:7.5 m、翼幅:24.7 m。

一方JAL機はA350-900、大きさは全長:66.8メートル、全高:17.05メートル、翼幅:64.75メートル。
JAL機は海保機に比べて全長で約2.6倍、全高で約2.3倍、翼幅で約2.7倍です。

接地間際には旅客機はFlare(フレアー)と言う接地操作を行い、機首上げを行います。
この機首上げに伴いパイロットは降下率をコントロールするために滑走路の延長線上の遠くを見ている事が多く手前は見ていません。

小さいサイズの海保機はもともと操縦席が高い位置にあるJAL機の下に潜り込み視認できなかった可能性があります。

気が付いたとしても・・・

例え衝突直前に気が付いたとしてもGo—Around(進入のやり直し)は間に合わず衝突していたと思われます。
もし気が付いて機首を上げ、Powerを最大にして、接触が回避できない場合、JAL機の損傷はもっとひどいものになった可能性があります。

またもしこの事象が昼だった場合には飛行機の滑走路への進入の目視は容易に確認できますのでこの事故は起こらなかったと思います。

日本の航空会社の緊急事態に対する取り組み

それにしてもJAL機の乗客乗員が全員無事に脱出出来たことは不幸中の幸いです。
海外では奇跡とまで言われているようですが、これは日本の航空会社がまじめに訓練に取り組んでいる証拠とも言えます。
また秩序を重んじる日本人の国民性も誇りに思います。

2024年が平和な年であることを祈ります。

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